もし、敬語の試験を受けたら僕は落第点を取ってしまいますよう。僕にとって敬語と言うのは、小百合さんが手紙の中で使っている程度の敬語ですよ。僕は卑弥子さんと違って“ござ〜♪〜ます”なんて、これまでの人生で一度も使ったことがないですよう。
どうしてでござ〜♪〜ますか?
自分の口から出るような言葉とは思えないのですよう。無理矢理台本を読まされているような気になってしまいますよう。体中が痒くなるような、そういう異常な気分に陥(おちい)るのですよう。
そう言うものでござ〜♪〜ますか?おほほほほ。。。
卑弥子さんは、ずいぶんと“ござ〜♪〜ます”を使っているけれど、違和感はないのですか?
ござ〜♪〜ませんわ。あたくしのトレードマークでござ〜♪〜ますから。うしししし。。。
うん、うん、うん。。。確かにそうですよう。でも、卑弥子さんと僕の対話を読んで、中には卑弥子さんの“ござ〜♪〜ます”を読むのがイヤで他のサイトに行ってしまう人も居ると思うのですよう。
どうしてでござ〜♪〜ますか?
どことなく、ふざけているようでしょう?卑弥子さんも、そう思いませんか?
あたくしが、自分でふざけていると思うはずがござ〜♪〜ませんわ。デンマンさんが“ござ〜♪〜ます”を使えとおっしゃったから、あたくしは使い始めたのでござ〜♪〜ますわア。
それには訳があるのですよう。
どのような。。。?
つまり、できるだけト書きを書かないようにするためですよう。僕の記事は『レンゲ物語』も、この『小百合物語』も対話形式になっていますよ。
そうでござ〜♪〜ますわね。
。。。と、卑弥子さんが言いました。。。と、デンマンが言いました。。。と言うようなト書きをすべて省いて書いているのですよう。さらに会話文を示す「 」も省いているのですよう。
つまり、誰が話しているのかが文章を読めば分かるように、デンマンさんは第一人称を変えているのですわね。あたくしが“ござ〜♪〜ます”を使っているのも、そのためですね?
その通りですよう。卑弥子さんの場合には“あたくし”をつかう。僕は“僕”を使うから、どちらが話しているのか?主語を書く場合には、出だしですぐに分かる。
そうでござ〜♪〜ますわね。
ところが、英語でこれをやろうとするとまず不可能ですよう。
どうしてでござ〜♪〜ますか?
日本語と違って敬語がない。全くないわけじゃないけれど、日本語の敬語と比べれば、ないに等しい。しかも、第一人称は“I”以外にないのですよ。日本語にはおびただしい数の“I”に当たる第一人称がある。僕が思いつくだけでも次の通りですよう。
日本語の第一人称のいろいろ
吾輩は猫である。
俺、オレ、オレッチ、私、あたし、あたくし、
わたくし、うち、あたい、あちき、わちき、
わらわ、手前、テメー、僕、ボク、自分、
我、我輩(わがはい)、麻呂、拙者(せっしゃ)、
みども、朕(ちん)、余(よ)、予(よ)、。。。
“朕(ちん)は。。。”と、でだしで言っただけで、日本人ならば誰がしゃべっているかがすぐに分かる。日本でこの第一人称を使えるのは一人しか居ない。つまり、天皇だけです。昭和天皇が使ったのを僕はニュース映画で見たことがありますが、現在の天皇が使ったのを聞いたことはありません。多分、もう使わないのではないか?
。。。んで、英語では“I”という第一人称が一つなのに、日本語にはどうしてこれほど第一人称がたくさんあるのでござ〜♪〜ますか?
雪の降らないところでは雪をあらわす単語はひとつあれば足りるのですよね。ところが雪の多い地方だと、いろいろの名の雪がある。エスキモー(イヌイット)の言葉には、さまざまな雪を表す言葉がありますよ。さらさら雪、ボタン雪、ザラメ雪、細雪(ささめゆき)、。。。にあたる別々の単語があるのですよう。
。。。と言う事は、日本では、一人一人がさまざまな人格になれる。つまり、日本人は多重人格者なのござ〜♪〜ますか?
アメリカ人やカナダ人から比べると、確かに日本人には、そういうところがありますよね。アメリカ人もカナダ人も素直に自分を表現しますからね。でも、日本人はそうじゃない。
日本人は多重人格障害者でござ〜♪〜ますか?おほほほほ。。。
僕は、そう言い切るつもりはないけれど、日本人は微妙な人間関係に敏感なのですよ。だから、主語を使い分けて、相手に対して尊敬の気持ちを表したり、謙譲を表現したりする。子供の間では、“オレ”と言っていても、学校の先生の前では“僕”と言ったりする。自分の家では“俺”と言っても、会社では“私”を使う。
。。。んで、その事が生き方とも関わっていると、デンマンさんはおっしゃるのでござ〜♪〜ますか?
僕は人生の半分以上を海外で生活してきて、しみじみと、そう思いますよ。英語で考え、話している自分と、日本語で考えて話している自分が違うのですよう。
たとえば。。。?
僕が会社で働き始めた頃のエピソードを紹介しますよ。
どのような。。。?
日本では、上の敬語の記事でも書いてあるように目上、目下の関係をはっきりさせないと会話がうまくゆかないのですよう。
たとえば。。。?
相手をどのように呼ぶか。。。?英語の場合だったら“you”しかないから、第二人称の単語からどれを選ばなければならないか?そのような事を考えなくてもすむ。だから、初対面から結構スムーズに会話を始める事ができる。
日本では違うのですか?
僕が松下で働き始めたとき、僕が配属された技術部の同じ年頃の同僚たちは、僕を“加藤さん”と呼ぶか“加藤君”と呼ぶかで迷っていましたよ。
どうしてでござ〜♪〜ますか?
僕の同期の新入社員が大阪の枚方市の体育館に研修で集まった時には700人居ましたよ。でもね、僕はコンピューターのソフトを知っている人が欲しいと言う事で、特別に6月にスカウトされて入社が決まったから、一人だけ松下通信のデータ通信技術部に配属されたのですよう。
要するに定期入社ではなかったのでござ〜♪〜ますね?
そうですよ。だから、周りの同僚には僕が何年に卒業したのか分からないし、年齢も分からない。だから、初めのうちは会話もぎこちない。僕は、若い頃ふけて見られたのですよ。だから、同じ年頃の人は僕を“加藤さん”と呼ぶ人が多かった。でも、そのうち僕の卒業年度が分かると、今まで“加藤さん”と読んでいた人が“加藤君”と呼ぶようになって、急にでかい態度を示すようになったのですよね。
うふふふふ。。。そうですわよね、確かに、日本では上下関係がはっきりさせますわ。
卒業年度が1年違うだけで、全く違う扱いを受けますよ。学校でもそうでしょう?特に体育会系では、この上下の差は厳しい。
そうでござ〜♪〜ますわ。その上下の関係は日本では終生続きますわ。英語を話している国では違うのでござ〜♪〜ますか?
日本のように上下関係をあまり気にしませんよう。ほとんど気にしないと言った方がいいかもしれませんよ。
イエローナイフ (人口約2万人)
僕はイエローナイフの政府の仕事からバンクーバーでコンサルタントとして働くようになったのだけれど、その会社は200人ほど居ましたよ。社長室に挨拶に行って、僕が “Mr. Smith, I'm glad to see you.” と言ったら、“Call me George, will ya?” かなり砕けたアメリカ英語で “そんなに堅くならずに、ジョージって呼んでくれよう” と言われたものですよう。
初対面からでござ〜♪〜ますか?